京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻 リハビリテーション科学コース
臨床バイオメカニクス研究室

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Accept News ~井口客員研究員(京都先端科学大学)の論文がJournal of strength and conditioning researchに採択されました~

2022年12月13日

Accept News!!

井口客員研究員の論文がJournal of strength and conditioning research(IF:4.415)に採択されました。

 

タイトル:Synergistic dominance induced by hip extension exercise alters biomechanics and muscular activity during sprinting and suggests a potential link to hamstring strain

 

共著者:Junta Iguchi, Tatsuya Hojo,Yoshihiko Fujisawa, Kenji Kuzuhara, Ko Yanase, Tetsuya Hirono, Yumiko Koyama, Hiroshige Tateuchi, Noriaki Ichihashi

 

研究の概要​:

本研究の目的はハムストリング肉離れ(以後、『ハム肉離れ』)の発生メカニズムに明らかにするために実施された。先行研究によりハム肉離れは走行時の遊脚期後半(着地までの130ms間)、もしくは立脚期前半に発生することが明らかになっている。本研究は主に遊脚期後半における下肢の運動学的、動力学的分析、さらに筋電図を用いた分析を行った。またハムストリングが二関節筋肉(主動筋:膝屈曲、協同筋:股関節伸展)であること、さらに主動筋が何らかの理由で機能不全に陥った際に協同筋が主動筋の役割を果たすSynergestic dominanceという現象に着目した。仮説として股関節を強調したトレーニング(例:スクワット)により、遅発性筋肉痛(DOMS)が発生し、股関節主動筋である大殿筋が機能不全に陥り、協同筋であるハムストリングにより大きな負荷がかかっていると考えた。実験は計3日間にわたり実施された。被験者は運動を定期的に実施している男子大学生・大学院生計15名(age 23.1±1.28 years)を対象とし、1日目にベースライン測定(走動作)、DOMS誘発トレーニング、2日目にDOMSの程度をチェック、3日目に再度DOMSの程度をチェックと走動作の測定を実施し、1日目と3日目の値を比較・検討した。その結果、3日目の股関節屈曲角度は1日目と比較して、有意に低下した(p<0.05)。その一方、膝関節屈曲角度は1日目と比較して3日目の値が有意に増加した(p<0.05)。EMGに関しては、3日目の内側広筋(VMO)、大腿二頭筋長頭(BF)、さらに大殿筋(GM)の筋活動が1日目と比較して有意に増加した(p<0.05)。また着地時の床反力進行方向成分の最大値は3日目の方が1日目より有意に高い値を示した(p<0.05)。今回結果として見られた運動学的データ(股関節屈曲角度減少・膝関節屈曲角度増加)は、下肢の疲労とハム肉離れとの関連を調査した先行研究と一致するものであり、この運動学的変化はハムストリングをより収縮状態にするため肉離れのリスクが増加することを報告されている。特に股関節屈曲角度の減少は、前向き研究によってもその危険性が指摘されており、Gabbeらの研究によれば、股関節屈曲角度が1度減少するごとに、ハム肉離れのリスクが15%増加することを報告している。また3日目に見られたGMとBFの筋活動の増加は、疲労による代償作用と考えられ、特にBFの筋活動増加はハム肉離れ発生リスクの高い遊脚期の負担増に繋がる可能性が示唆された。

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